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不 眠 症
 

 夜長の秋です。生活スタイルが多様になった今日は、求められる情報やサービスに迅速に対応するには夜長を楽しむ暇(いとま)などなく、むしろ生体リズムを乱す「眠らない社会」になっております。

 実際、眠れない人が増えているのです。98年のある調査では、成人の平均睡眠時間は6.5〜7時間です。若い世代ほど短く、また家事や育児、介護に忙しい40〜60代の女性も短い傾向にあり、「睡眠で休養が取れていない」と感じている人は全体の23%もありました。また睡眠満足感や日中の眠気などを指標とした、最近の国際比較調査では3割もの日本人が「不眠症の疑い」と推計されております。

 そもそも、人はなぜ眠るのでしょうか。心身の回復と体力の節約という二つの意味があるようです。脳は、疲れると自動的に睡眠物質という脳内物質が睡眠中枢に働いて、大脳機能を休ませようとするのです。もう一つは睡眠でエネルギーを蓄えるというものです。これは脳にある体内時計でコントロールされていて、夜になると眠りが起こるという仕掛けになっています。

 眠れないと、感情や意欲、自律神経をつかさどる大脳機能の変調をきたしてしまい、仕事や人間関係といった日中の生活に支障が出てくることになります。いらいら過敏、注意散漫、疲れやすさ、倦怠感などから、作業能率の低下、ミス、事故などが起こりえます。チェルノブイリの原発事故、アラスカ沖のタンカー事故なども睡眠障害による人災といわれております。身近なところでは、深夜から早朝に多発する交通事故も、不眠が関係しているのです。組織やネットワークで働く現代では、睡眠障害は単に個人の心身問題ではすまない、社会問題なのです。

 私たち臨床家は不眠を三つに大別して治療の参考にしております。床に就いてもなかなか寝付けない「入眠障害」、寝付きはいいのですが夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」、まだ寝たりないのに早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」に、です。不眠症の人は寝酒を常用している人が少なくないのですが、アルコールは入眠には都合よくても睡眠全体の質を悪くします。また徐々に飲酒量を増やさないと効かなく弊害があります。

 今日では、そういった心配のない、いい睡眠剤が多数開発されております。睡眠剤には癖になる、こわい薬という誤解がありますが、お酒よりはるかに安全で良い睡眠が得られます。規則正しい睡眠リズムが形づくられるまでの手段として、医師との相談の上でうまく睡眠剤を使うほうが安心なのです。

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