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生 き る 力
 

 社会の近代化は、モノ・カネの豊かさと便利を供与してくれた。その反面、生活の中での人と人との繋がりを希薄化させ、自己解決能力や自分癒しの力を衰退させてきたように思う。実際、人といると疲れる、人と接するのが怖い、集団の中に入れない、と訴える若者が増えている。大人たちも、旧来であれば生活の中で解決したであろうに、些細な悩み事でも専門機関に外注するようになっている。便利社会の副産物、生きる力の減衰と言えよう。

 精神医学は身体医学と違って対人関係の臨床学だから、人間関係の不調から生ずる孤独や悲哀、時には怒りや憎悪などといったネガティブな感情を扱うのだが、近年は相談者自身の生きる力の弱さに起因する人間関係上の問題が目立つ。本来は学校教育や地域社会で開発すべきこの力の育成が、精神医療にまで求められる時代になった。

 生きる力の基礎は対人関係を創る力なのだが、加速的に進行する少子車社会は生活の場における人と人との間、家と家との繋がりを失わせている。とくに、もはや人と遊ぶ場も時間も無くなっている現代っ子には、一層コミュニケーションのスキルを育みにくいのは必然だ。性格発達上、看過できない社会問題である。

 彼らに共通する弱点は、人に嫌われる怖れゆえに能動的には人と関われない、人間関係を構築する力の乏しさにある。相手が関心を寄せて接近してくれるのを待つ姿勢なのだ。このように対人関係を希求していながら受動的な態度は、自己発見や仲間作りを甘言とするカルト教団や自己啓発セミナーに走ってしまう大学生の心の問題としても、かねてから取りざたされてきた課題でもある。
生きる力をどう育成すべきだろうか。まずは生活の場で人と人との繋がりを復権するしかない、そしてその交流の中で自己肯定感や自己効力感を抱ける体験を大人が用意してやらないといけないのだと思う。

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