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子どもの目を外に向けさすには
 

 引きこもる子どもの心を、どう開かせたらいいのだろうか。

 天の岩戸にお籠りになった天照大神の心を動かしたものは、闇夜の中で裸になって踊り、かんらかんらと哄笑する八百万の神々の祭騒ぎだった。引きこもる子どもの家庭では笑いが絶えて久しいかもしれない。が、ここで重要なのは笑いそれ自体ではなく、閉ざした心を揺さぶる出来事である。誘惑の効用と言ってよい。

 引きこもっていても子どもは外界にアンテナを張っているもの。だから「社会的」引きこもりと形容されるのだが、子どもは何に関心を保ちつづけているのだろうか。インターネットはどこにアクセスしているのだろうか。ゲームは何を楽しんでいるのだろうか。そこを掴んだうえで、親と子が、先生と生徒が繋がってほしいのだ。

 あるお母さんは、誘われて旧友たちと樹海ドームに草木展覧会を観に行った。あまりにも心洗われる清々しい体験だったので夫にその土産話をしたところ、数日経って引きこもる青年が「ブナ原生林を、見に行きたい」と発し、どこで聞いていたものかと親をびっくりさせている。すぐに母親は子の要望に応えるのだが、もちろんその外出で新しい人間関係が広がったわけではない。しかし、彼は目に残った一コマ、一コマを何枚も描くようになった。その絵を話題にすると、子どもも無愛想ではあるが話をしてくれるようになったと言う。家族外の人間関係は相変わらず遮断しているものの、彼は絵を雑誌に投稿しようと外への発信に関心を膨らましているらしい。

 意図せず縁が繋がった話だが、しかし何でも誘えばいいというものではない。親の作為が見える誘惑は、拒絶されるだけでなく家庭内暴力を誘発するかもしれないから、注意を要する。子どもの関心事に沿った勧誘が望ましいのだが、親が本当に感動した事柄ならば、子どもは心を惹かれるはず。もし親子で関心事や体験を共有できれば、団欒に笑いが復権し、その笑いが子どもの世界をさらに開かしていくと思う。

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