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引きこもりの扉を開く
 

 透きとおった青空と新緑の山野を映し出す田園は、清々しく心洗うばかりだ。引きこもる若者には、秋の結実を予兆するこの風景をどう感じ取っているのだろうか。

 一口に引きこもりといっても、自室内に閉居して家族とも顔を会わせない蟄居から、家庭内では気ままに過ごしているが外出しないレベルまで、まちまちである。いずれにせよ、社会的な役割や対人関係から長期間退却している事態を意味している。その退避が、不登校という早い発達段階であればあるほど、また長引けば長引くほど、心理性格的な発達に及ぼす影響が少なくない。仮に登校できなくとも、仕事に就けなくとも、集団に「群れる体験」から社会性を育みたいものだ。

 ある青年は、世間的には知名度の高い大学に入学したのだが、他大学受験を理由に早々に中退している。しかしブランド大学への進学を要望する親との葛藤の中で、数年間も引きこもり家庭内暴力を惹き起こしていた。当方の生活塾に寄宿し、丁稚奉公という社会的な役割を担い責任を負う体験を積んで、巣立って行った。「体験が人を創る」のだろう。都会に戻った彼は、現在ボランティア活動をしつつ福祉専門学校に入る準備を進めている。

 彼だけでなく、引きこもる若者たちの多くは親と同じ価値観に生きようとして挫折し、そのために自信を喪失している。そんな価値観から自由になりたいのだが、その手立てがないから親に反発し、ただ苦悩の淵に佇むしかないのだ。

 退却が長引けば、人間関係が親子という関係枠だけに限定されてしまい、家族の力でその硬直化した常態を変えるのは至難である。閉ざされた家庭に風通しを良くする工夫が必要だ。本人が同席しなくとも家族は親戚の往来を楽しめばいい。また外部に相談をし、それを夫婦の話題にすればいい。引きこもる子どもも、閉塞的な心理環境を変えたいと願って、両親の会話に耳を大きくしているのだから。

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